聖(ひじり)の好(この)む物(もの)、木(き)の節(ふし)鹿角(わさづの)鹿(しか)の皮(かは)、蓑笠(みのかさ)錫杖木欒子(もくれんじ)、火打笥(ひうちけ)岩屋(いはや)の苔(こけ)の衣(ころも)。
-- 梁塵秘抄 306 --
KOMUSUI ICHIZA KAMISHIBAI
聖(ひじり)の好(この)む物(もの)、木(き)の節(ふし)鹿角(わさづの)鹿(しか)の皮(かは)、蓑笠(みのかさ)錫杖木欒子(もくれんじ)、火打笥(ひうちけ)岩屋(いはや)の苔(こけ)の衣(ころも)。
-- 梁塵秘抄 306 --
冬は山伏(やまぶし)修行せし、庵(いをり)とたのめし木(こ)の葉(は)も、紅葉(もみぢ)して散り果てて、空さびし、褥(にく)と思(おも)ひし苔(こけ)にも、初霜雪(はつしもゆき)降り積みて、岩間(いはま)に流(なが)れ来(こ)し水(みづ)も、氷(こほり)しにけり。
-- 梁塵秘抄 305 --
峯(みね)の花(はな)折(を)る小大徳(こだいとく)、面立(つらだち)よければ裳袈裟(もげさ)よし、まして高座(かうざ)に上(のぼ)りては、法(のり)の声(こゑ)こそ尊(たうと)けれ。
-- 梁塵秘抄 304 --
柴(しば)の庵(いをり)に聖(ひじり)おはす、天魔はさまざまに悩(なや)ませど、明星漸(やうや)く出(い)づる程(ほど)、終(つひ)には随(したが)ひ奉(たてまつ)る。
-- 梁塵秘抄 303 --
春の焼野(やけの)に菜(な)を摘(つ)めば、岩屋(いはや)に聖(ひじり)こそおはすなれ、唯一人(ただひとり)、野辺(のべ)にてたびたび逢(あ)ふよりは、な、いざたまへ、聖(ひじり)こそ、あやしの様(やう)なりとも、わらはらが柴(しば)の庵(いほり)へ。
-- 梁塵秘抄 302 --
我等が修行せしやうは、忍辱(にんにく)袈裟(けさ)をば肩に掛け、又(また)笈(おい)を負(を)い、衣(ころも)はいつとなくしほたれて、四国の辺地(へち)をぞ常に踏む。
-- 梁塵秘抄 301 --
我等(われら)が修行に出(い)でし時(とき)、珠洲(すず)の岬(みさき)をかいさはり、打廻(うちめぐ)り、振棄(ふりす)てて、一人(ひとり)越路(こしぢ)の旅に出でて、足(あし)打(うち)せしこそあはれなりしか。
-- 梁塵秘抄 300 --
大峯(おほみね)通(とを)るには、仏法修行する僧ゐたり、唯一人(ただひとり)、若や子守(こもり)は頭(かうべ)を撫でたまひ、八大童子は身を護る。
-- 梁塵秘抄 299 --
聖(ひじり)の住所(ぢうそ)はどこどこぞ、大峯(おほみね)葛城(かつらき)石の槌(つち)、箕面(みのう)よ勝尾(かちう)よ、播磨(はりま)の書写(そさ)の山、南は熊野の那智(なち)新宮。
-- 梁塵秘抄 298 --
聖(ひじり)の住所(ぢうそ)はどこどこぞ、箕面(みのう)よ勝尾(かちう)よ、播磨(はりま)なる書写(そさ)の山、出雲(いづも)の鰐淵(わにふち)や日の御崎(みさき)、南は熊野の那智とかや。
-- 梁塵秘抄 297 --
天台大師は能化の主(す)、眉は八字に生(お)いわかれ、法(のり)の使(つかひ)に世(よ)に出(い)でて、殆(ほとを)ど仏(ほとけ)に近(ちか)かりき。
-- 梁塵秘抄 296 --
大師の住所はどこどこぞ、伝教慈覚は比叡の山、横川(よがは)の御廟(みめう)とか、智証大師は三井寺にな、弘法大師は高野の御山(をやま)にまだおはします。
-- 梁塵秘抄 295 --
山寺(やまでら)行(おこな)ふ聖(ひじり)こそ、あはれに尊(たうと)きものはあれ行道引声(いんぜい)阿弥陀経、暁(あかつき)懺法(せんぼう)釈迦牟尼仏。
-- 梁塵秘抄 190 --
大峯(おほみね)行(おこな)ふ聖(ひじり)こそ、あはれに尊(たうと)きものはあれ、法華経誦する声(こゑ)はして、確(たしか)の正体まだ見えず。
-- 梁塵秘抄 189 --
大峯(おほみね)聖(ひじり)を舟に乗せ、粉河(こがは)の聖(ひじり)を舳(へ)に立てて、聖宮(さうきう)聖(ひじり)に舵(かぢ)取らせて、や、乗せて渡さん常住仏性や、極楽へ。
-- 梁塵秘抄 188 --
迦葉尊者の石の室、入(い)るにつけてぞ恥(はづ)かしき、縁執(えんしう)尽(つ)きざる身にしあれば、袂(たもと)に花こそ止(とま)るなれ。
-- 梁塵秘抄 187 --
迦葉尊者の打ちし鐘、聞(きこ)えぬ所(ところ)ぞ無(な)かりける、憍梵波提(けうぼんはだい)独(ひとり)こそ、定に入りては聞かざりし。
-- 梁塵秘抄 186 --
迦葉尊者のふる道に、竹の林ぞ生(お)いにける、功徳願の園(その)見れば、昔の庵(いほり)あはれなる。
-- 梁塵秘抄 185 --
迦葉尊者あはれなり、付嘱(ふぞく)の衣(ころも)を頂(いただ)きて、鶏足山(けいそくさん)にこもりゐて、龍華の暁(あかつき)待ちたまふ。
-- 梁塵秘抄 184 --
迦葉尊者の禅定は、鶏足山(けいそくさん)の雲(くも)の上(うへ)、春の霞(かすみ)し龍花会(りうかゑ)に、付嘱(ふぞく)の衣(ころも)を伝(つた)ふなり。
-- 梁塵秘抄 183 --