来年は巳年 『おこもり・蛇と太陽』

 巫女型の祭りにおける神様は、性交・受胎・出産と、人間と同じ過程を経て現れる。そしてこの世に迎えられ、祭りの期間滞在すると常世へと送り帰される。神様は迎えられ、また送られる。日本における祭りとはそういう儀式であるらしい。巫女はこの神様の行動を擬態するものとして存在する。巫女は心身を清めるためにおこもりをするが、このおこもりの間に一連の手順が行われるのである。おこもりはつまり神様が母の胎内にいるという状態で、神様はこの世に降臨するために、その狭さや暗さに耐えながら待つのである。おこもりの行われる場所は原始信仰の頃は東西軸の中央にある穴であった。信仰が陰陽五行説と融合してからは「子」の位置、すなわち北へと移動した。陰陽五行説以降はこの「子」の位置が祭りの出発点となる。そしてその神様がいよいよ顕在化するのは「卯」の位置、すなわち東となる。おこもりで身を清めた神様は東からやって来るのである。神様が東からやって来るという考えは太陽信仰からも導き出されたようである。古代の太陽は東で産まれ、一日の間この世で暮らし、やがて常世へと帰ってゆく。常世とはすなわち死の世界であるから、太陽は一日を終えると死ぬ、ということになる。死んだ太陽は穴に入る。そして洞窟にこもる。穴は女性の身体にあり、太陽はその穴に入るのである。穴に入る太陽は蛇の姿である。そして太陽は疑似母胎である洞窟の中で身を清め、再び生命を宿し、東から生まれ出づるのである。巫女型の祭りにおけるおこもりの儀式は、巫女が神様を迎え入れ、胎内に神様そのものを宿し、やがて巫女そのものが神様となって現れる、(性交・受胎・出産)という一連の手順を巫女が演出するものなのである。