来年は巳年 『しめ縄と蛇・祭りの変貌』

 日本の祭りには蛇型と巫女型があり、もともとの原始的な祭り(蛇型)が、徐々に洗練されて巫女型に進化していったという。男女の祖先神として、蛇をそのまま顕在化させるのが蛇型の祭りであり、男の祖先神(蛇)と、その相手役としての巫女の絡みを描くのが、巫女型の祭りというわけである。蛇型の祭りで用いられるご神体は縄で作られるものが多く、神社にいけば必ずあるしめ縄も二匹の蛇の絡み合った姿と言われれば、なるほどそうかもしれない。そうである。もともとはしめ縄だけで神様であったのだ。そのしめ縄がさまざまなモノと絡み合い、神聖な空間が生まれたのだ。不気味な大岩にしめ縄を張れば、そこに神様が現れ、古い巨木にしめ縄を張れば、またそこに神様が現れた。そう考えると日本各地に祀られる八百万の神様のもとは蛇信仰より始まった、そう見て悪くない気もする。そうこうするうちに時代が下り、物語が作られるようになる。神様である蛇と、ヒメの物語である。八俣遠呂智の神話では蛇は倒される対象とされるが、オホタタネコの神話では蛇はヒメと交わる存在として描かれる。古事記には八俣遠呂智の物語が先に描かれてオホタタネコの神話はずいぶん後に描かれているが、実際の物語としてはオホタタネコの神話のほうが八俣遠呂智神話より先にあったように思う。もともと畏れ敬う対象としてあった蛇が、やがて退治される存在へと変貌していく過程が、古事記の書かれるそれ以前にあったのであろうと推察される。とまれ、時代が下り神話ができると、蛇(しめ縄)が巻かれた神聖な大岩や巨木の前に祠が建てられるようになり、それが神社となっていった。そして単純な蛇型の祭りはより複雑な巫女型の祭りへと移行していったのである。