第07話 コンサルティウム:闇の会議 003
円卓の正面は空席となっており、そこは議長席とあった。その議長席の右手にコホ・モリーは座り、「お前も座れ」と隣の椅子を指さした。言われるままに涼太が座るとそれを待っていたかのように、「今回のインタビューはどうだった。何か不思議に思わなかったか?」とコホ・モリーが尋ねた。涼太はコホ・モリーが何を言いだしたのか理解できず、目をパチパチとしばたかせた。マ・ムーシーは机を指でコンコンと叩き、「犬神博士のような有名な科学者のインタビューをキミのような新人が任されるのは変だと思ったであろう?」と冷ややかな口調で言った。「あ、いや。ボクは」と涼太は口ごもった。至極呑気な思考をする涼太は、その質問をされるまで、雑誌の記者とはそういうものであると思っていた。相手が大物でもなんでも、手の空いている記者がインタビューに出向くものであると思っていた。「お前は馬鹿だなあ。新人が犬神博士のインタビューを任されるのは、それなりの理由があってのことだぞ」とコホ・モリーはグフフと笑いながら涼太をつついた。「余計なことは言わなくてよろしい」とマ・ムーシーは冷たくコホ・モリーを睨み付け、それから涼太に向き直り、「まあ、そういうことだ。気を悪くしないでくれ。とにかく我々は二か月間、キミの言動を見させてもらい、キミを誠実な人間だと判断した。だからあのインタビューを任せて犬神博士にお近づきになってもらったのだよ」と言った。その言葉は優しげであったが口調は相変わらず冷たかった。「実際、お前は筋が良かったぞ。何せあの気難しい犬神博士がお前には少し打ち解けて話していたからな」とコホ・モリーは太い腕で涼太の肩を組むようにして、「お前は馬鹿だけれど、見所がある」と笑いかけた。