第07話 コンサルティウム:闇の会議 002
「余計なおしゃべりはここまでだ。黙ってついてこい」とカメラマンが涼太に言った。涼太はカメラマン以外の誰かがそこにいること始めて知り、それ以降は黙ってあとに続いた。懐中電灯の灯りのみで照らされた真っすぐな廊下は、何度か分岐を繰り返し、三人は黙々とその暗くて細い廊下を歩いた。そうして歩くうち硬くて立派な樫の扉の前に出た。「さあ、入り給え」と先ほどの声の主がギギギと扉を押し開けた。中には幾本もの燭台が置かれ、蝋燭の灯りが室内を浮かび上がらせていた。壁には『愛欲の科学』と書かれた扁額が飾られ、奇妙な形態の流木があちらこちらに転がっていた。「ようこそ、公正評議会(コンサルティウム)へ」と男が振り向いた。青白い顔に大きな黒縁のメガネ。漆黒に近い髪を七三に分け、神経質そうな瞳には他人の心を何かざわつかせるような不気味な色があった。身長は高いようであるが、かなりの猫背であるため、あまり背の高い印象を人に与えなかった。「初めまして、狸山君。私がこのコンサルティウムの顧問、マ・ムーシーだ」と彼は言った。そのマ・ムーシーが顧問席に座ると次いでカメラマンが、「オレはコンサルティウムの警備担当、コホ・モリー」と名乗り、「時々『ウェルズ』のカメラマンも行うが、それはあくまで任務上での偽装だ」と言った。涼太はひどく不安になった。「い、いったいボクはどうなってしまうのでしょう?」マ・ムーシーは言った。「我々はキミが入社してから今日までの働きぶりを見て、公正評議会の一員に入ってもらうことにしたのだよ」次いでコホ・モリーが言った。「お前は正義を愛する青年だ。我々も正義を重んじる団体だ。両者の相性はきっと良いであろう」そしてニヤリと笑った。