ボーンコレクター 04-09
彼はスーツにネクタイ、彼女は装飾のちりばめられた派手なチャイナドレスを着ていたけれど、湖にはいるとそれがどんどんと透けていき、やがて二人は素裸になった。しかし彼女はまるで気にする風もなく、湖面を平泳ぎで泳いだ。彼はその後ろを泳ぎながら、水面に浮かんだり沈んだりする彼女の尻を眺めた。そして開かれたり閉じられたりするそれの奥を眺めた。かの部分と太陽とは直視できるものではない、とフランスの思想家ジョルジュ・バタイユは言ったそうであるけれど、どうして見られないことがあろうものか。小さく開いたり閉じたりする穴は、奇妙な生き物のようでとても可愛いではないか。寄ったり離れたりする襞も、なんとも愛らしいではないか。彼は彼女に近づいた。そしてそれをもっと見ようとじっと目を凝らした。途端、彼女の平泳ぎの足が伸びて、彼の顔をボンと蹴った。彼は驚き我に返り、彼女から少し離れた。「あら、大丈夫?」と彼女は顔を上げて振り向いた。「まったく平気さ」と彼は少し照れながら笑った。「もうすぐ着くわ」と彼女は前を指差した。見ると湖の中央に浮いていた建物はもうほんの数メートルほどの先にあった。彼女は一息にそこまで泳ぎ、それからカイツブリのようにちゃぷんと水面に沈んだ。彼も彼女と同じように水面から中に潜った。彼女はパタパタと今度は両足を揃えて縦に水を蹴って進んだ。そして水中にそびえる石の建物の入口からするりと中に入った。彼も彼女に倣って、同じ入口から中に入った。そして不思議に思った。「おや、ここは水中のはずなのに息ができる」彼女はさも当然という風に頷いた。「そりゃそうよ。だってここはロプノール。さまよえる湖の底なのよ。息くらい出来て当たり前よ」