ボーンコレクター 04-08

 記憶館の扉を開けると中はけっこう薄暗かった。電灯らしきものはなく、壁のあちこちにゆらゆらと揺らめく燭台の火のみが照明のようであった。その蝋燭の灯りに少し目が慣れてくると中の様子が見えてきた。小屋の中は板敷三十畳ほどの広間で壁沿いにはぐるりと長椅子が置かれていた。その椅子の前には台が置かれて、それぞれの台に髑髏がひとつずつ、座布団を敷いて飾られていた。中央にも髑髏が奇妙な具合に積み上げられ、それは何か妖しげな、たとえば髑髏本尊を拝む真言立川流の儀式でも行われるような雰囲気があった。何組かの客がすでに奥に入っていて髑髏の目から出るお香の煙にウトウトと眠っているようであった。彼も適当な場所を選んで椅子に座りゆっくり目を閉じた。そしてたちこめる煙を思いきり吸い込んだ。ふと気が付くとあたりは不思議な砂漠の町となっていた。 「この湖はさまよえる湖よ」と、いつの間に来たのか女が横に立っていた。「キミは?」とボーンコレクターは尋ねた。「楼蘭の美少女と、あなたたちは呼んでいるわ」彼女は少し微笑んだ。彼女が楼蘭の美少女だとすると、ここはきっとその町。千年以上もの昔に流砂に呑まれて消えた町。ここが楼蘭だとすると、その町の中心にあるのはロプノール。天鵞絨色の水面に遊ぶ水鳥たちと、その湖の中央に浮かんだ重厚な石の建築物。「違うわ。あれは浮かんでいるわけではなくて、もともとそこに建っていたのよ。そこに湖がやってきて、上部だけが水面から突き出すようになったわけ」あれが上部だけ? だとすると湖底にはさらに大きな建物の下部があるということだ。「行ってみたい」と彼は言った。「湖底の探検ね?」と彼女は微笑んだ。そして二人は並んで湖に入った。