ボーンコレクター 04-01
研究所に出勤すると彼は入口付近の壁からダチョウの羽根をひとつ手に取り、骨にハタキをかけはじめた。「これはエジプトのファラオの骨。これは太政大臣藤原公相の外法頭。ああ、なんて大きくて不思議な頭蓋骨」彼は愛する骨の、ひとつひとつに話しかけながら、慈しみを込めて丁寧にはたいた。すると、そこに普段まず陳列室に来ない佐礼嘉兵衛(されかうべゑ)専務と南木屋毒郎(なんぎやドクロー)事務長が来て、「ねえ、カルビ君。ちょっといいかね?」と両側から挟み込むかのように彼の側に立った。彼は驚き手をとめて、「カヘー専務にドクロー事務長」と二人の顔を見比べ、「あの、何か悪いことでも?」と恐る恐る尋ねた。事務長は彼の後ろに回りその両肩を軽くもみながら、「あまり良い知らせではないかなあ」と言った。そして、「キミも知っての通り、我々骨骨研究所の活動は国の補助金で何とか成り立っている。しかし今度のその予算が今度大幅に削られることとなったんだ」と彼のまるで預かり知らぬ話をした。「予算が削られる事とボクと、いったい何の関係があるのですか?」彼は不思議そうに二人を見た。すると専務が妙な微笑を浮かべて、瞬く間にその関係を解き明かしてくれた。「そこでだカルビ君。キミには今後、営業もしてもらわなくてはならなくなった。この理屈はわかるだろう? 骨骨研究所はもはや国の補助金に頼らずに自力で外貨を稼がなくちゃならない。というわけでキミに白羽の矢が立ったというわけなのだよ」彼は目をキョトキョトさせた。「ボクが営業なんて、そんな馬鹿げた話、嘘ですよね? 何せボクは馬鹿でマヌケで口下手で、おまけに人間嫌いなんですよ? 骨を拾うくらいしか能力のない、本当にダメな人間なのですよ」