ボーンコレクター 03-09
形而上学的なタブロー。目に見える形となった概念。それは組み上げられた骨。透けて消えてゆく肉体。残るは組み上げられた骨。骨、骨。そしてその骨の見せる幻影に導かれ、たどり着いた小さな平屋。「ああ、そういうことだったのか」彼は目を覚まして顔を上げる。そしてちゃぶ台の向こう側、手にグラスを持ったまま眠る彼女を見る。どことなく南方の香りの漂う、自分と同世代の綺麗な女性。そう彼女こそが、この小指の少女。ボクの可愛い恋人。ボーンコレクターは首飾りを持ち上げ、ユラユラと揺らしながら向こう側の彼女を見る。「リブ・ローズ。どうやらボクはキミに恋をしてしまったようだ」マヨの娘に選ばれて、村人に殺された少女。幾百年もの時を経て、再びここに現れた少女。「輪廻転生は存在する。前世はグルグル回っている。お釈迦様は正しかった。カール・ユングは正しかった。仏教万歳、曼荼羅万歳。この世に生きとし生けるものよ、回れ、回れ、回るのだ!」嗚呼、そんなことを考えるなんて。ボクはウイスキーに酔っているのか、それともこれは錠剤の後遺症か。そうか、これがエラブトキシンの毒? 夢のカプセルはボクの中枢神経を浸食し、徐々にボクを狂わせていくのか? 「いや、しかし。そんなことはどうでもいい。ボクはここにいて彼女はここにいる。それ以外に何が必要であるというのだ」彼はそうこう煩悶したあと、そっと微笑んで首飾りを握った。そして首飾りの骨で彼女の小指をちょんと突き、「この首飾りとキミの小指。そのどちらもがキミなんだね?」と夢見心地につぶやいた。彼女は膝を崩した格好でちゃぶ台にうつ伏して眠っている。彼はその彼女の脇の下に腕を回し、身体を支えてベッドに寝かせた。