ボーンコレクター 03-07

 すると後ろから一人の老人が現れ、「こんな奴に聞いても無駄じゃ。死人が生き返る方法、ワシが教えてやろう」と老婆を蹴飛ばして言った。「ありがたい」とボーンコレクターは振り向き、そして思わず目を見開いた。なんという異相、なんという狂相。その老人の鼻はなんと生殖器であった。あまりの衝撃に口をポカンと開けた彼に老人はさも平然と言い放った。「死人など、小便をかければいいのじゃよ」「小便?」と彼はまたしても驚いた。老人はさも当然だという風に、「昔からいうじゃろう? 小便は百薬の長とな。虫刺されでも火傷でも、小便をぬっておけば治るもんじゃ。それは死者にも有効じゃよ」と笑った。老人の自信に満ちた表情に彼は圧倒された。そして、確かにそれはあるかも知れない、と思った。アメリカ大陸の離島に住むクワキウトル族の伝説では、鬼退治を試みる弟が、鬼に殺された二人の兄に小便をかけて蘇らせたという事例もあった。小便には窒素とリンとカリウムが含まれていて、肥料としてもずいぶん活躍しているという。また昔、中国大陸で清王朝を打ち立てた女真族はそのエネルギーを得るために、小便で顔を洗っていたという。「ううむ、これは侮れない意見かもしれない」と彼は考え込んでしまった。老人はそんな彼を押しのけて今度は少女に直接言った。「さあ、娘。服を脱いで横になりなさい。ワシがオシッコを降り注いであげよう」少女は驚き、目を見張った。「そんな馬鹿な方法で人間が生き返ったりしないよ。野菜じゃないのだし」少女は肩を怒らせてその場から立ち去ろうとした。すると今度は彼が彼女の肩をつかんで、「いや、これは案外正しい方法であるかもしれない。試す価値はあるよ」と老人の前に引き戻した。