ボーンコレクター 03-04
そこに一匹のカワウソが川からのそりと現れて言った。「お楽しみのところ申し訳ないが、いつまでそうしていても埒があくまいよ」少女はハッと慌てて彼を突き放し、胸と太ももの上を手で隠しながら、「あなたは誰?」と赤らんだ顔で問いかけた。カワウソは大きく頷いて、「ワシはこの川のカワウソじゃが、もしお前さんが本気で生きたいと思うなら、その方法を教えてやってもよいわいな」と言った。「生きたいわ」と少女は言い、「生かしたい」と彼は叫んだ。「なるほど、よしよし」とカワウソは大きく頷いて、「もしそれが本気なら鬼の心臓を手に入れろ」と言った。「鬼の心臓?」と彼が問い返すとカワウソは再び大きく頷いて、「そうじゃ。鬼の心臓じゃ」と言い、「鬼の心臓には精気がある。たとえ一度死んだ身体でも必ず蘇るであろう」と教えた。「なるほど、それはあるかも知れない」と彼は頷き、「しかし鬼はいったいどこにいるの?」と彼女は尋ねた。カワウソは川の上流を指差し、「鬼は山頂の沼にあるクラスキノ入江に住んでいるが、心臓は外に隠してあって鬼の身体の中にない」と言った。「では心臓はどこにあるのです?」と少女が尋ねた。カワウソは少し残念そうに首を横に振り、「その心臓のありかはワシにはわからん。ただその沼の向こうにあるという砂漠、月の砂漠のオアシスに行けばニムキシュ族という部族がいて、彼らだけが知っておるという話じゃ」と教えた。彼はカワウソに礼を言ったあと、「旅に裸は向いていない」と手早く少女に衣装を着せた。そしてココヤシの森から外に出るとそこに大きな虎がいたので、ふたりはその虎にまたがり、「月の砂漠までいって欲しい」と依頼した。虎はのそりと立ち上がり、砂漠を目指して歩き始めた。