ボーンコレクター 03-01
ガチャリと平屋のドアが開いて、薄着の美人が現れる。年の頃は二十代半ば。南方系の血が混ざっているのか、褐色がかった肌をしている。彼はそう見定めながら、「ねえ、キミは誰?」と尋ねた。「あら? あなたこそ誰なの?」と彼女も尋ねた。そうしてしばらく見合ったあと、「どうやら家を間違えたみたいだ」と彼はがっくり項垂れた。すると彼女はニコリと笑って、「まあ、そう悲観しなくてもいいわ」と言ったあと、「どう? うちで飲んでいく?」と玄関から奥を指差した。見ると部屋の中央、小さなちゃぶ台の上にはウイスキーのボトルとロックグラスがひとつ置いてある。彼女はどうやら今まで一人で飲んでいたようで、見ればなるほど、頬もほんのり赤く染まっている。「じゃあ、お邪魔しようかな?」彼が玄関で靴を脱ぎ、ちゃぶ台の前に座ると、彼女はキッチンでグラスを探し彼の前にポンと置く。「氷もないからストレートでいい?」「ああ、ボクは別に何でもいいよ」そうして二人で乾杯し、琥珀色の液体で少し喉を潤してから、「ところでキミの名前は?」と二人はお互いに尋ねる。「私の名前はリブ・ローズ」「ボクの名前は骨月迦楼毘」「二人の出会いに乾杯」「そうまるで、コウモリ傘とミシンが手術台の上で出会ったような、美しい出会いに、乾杯」そうしてしばらく飲むうちに、彼のポケットから蒼い、まるでエラブウミヘビのような鮮やかな色の錠剤がコロリと転げ落ちる。「それは何?」と彼女は尋ねる。「ああ、これは夢のカプセル」と彼はそう言って錠剤を割り、「どうだい、ボクと旅にでないか?」とその半分を彼女のウイスキーにサラサラと混ぜ、「さあ、これを一気に飲み干して、二人で旅にでかけよう」と、自分も半分をコクンと飲んだ。