アングラ劇『犬神ぢごく変』 18-02

村長「それで蔵持の大尽からたんまりお金をせしめたんじゃから、お前は本当にたいした絵師じゃ。村の英雄じゃ」
申秀「そうか、そうか。ではさらに立派な英雄になってみようかのう」
村長「申秀、そう言えばお前の横に置いている布袋はなんじゃ?」
申秀「ああ、これは伏の命よ。八房の命よ」
村長「はて? それはどういうことじゃ?」
村人「おお、申秀。その布袋を持ち上げてどうする」
申秀「皆にまいてやろうと思うてのう、さあ、存分に受け取れ。これは伏の命」
村長「いててて。お前、何をする。そんなもの投げ落としおって、痛いではないか」
村人「そんなものって、村長。これは小判ですぞ?」
村長「何? 小判じゃと」
申秀「さあ、これは八房の命」
村人「ああ、小判じゃ小判じゃ」
村人「申秀が鳥居から小判をまきおるぞ」
申秀「さあ、これは伏の命」
村人「わあ、小判だ、小判だ」
村長「愚か者ども。拾うな、拾うな。申秀もやめい」
申秀「さあ、これは八房の命」
村人「ああ、それはオレのもの」
村人「いや、ワシのもの」