アングラ劇『犬神ぢごく変』 18-03
村長「拾うな拾うな、愚か者。それは申秀が自らの家族までも犠牲にして手に入れた小判じゃぞ」
申秀「さあ、これは伏の命」
村人「構うものか。申秀の家は犬神憑きだ。犬神憑きから金を受け取るのは当然であろう」
村長「やめろ、やめろ。小判を拾うな。血迷うな。これは申秀の小判じゃ」
村人「うるさい村長だ。叩きのめすぞ」
申秀「さあ、これは八房の命」
村人「ああ、どんどん小判が降ってくる」
村人「ああ、ワシもこれで大金持ちじゃ」
申秀「さあ、これは伏の命」
村長「ああ、お前ら拾うな拾うな。拾うなと言うに。この小判はすべて、あああ、ワシのものじゃ」
申秀「わははは。それでよい、それでよい。さあ、どんどん小判を撒くぞ」
村人「わあ、村長が狂ったぞ。皆から小判をうばいおる」
村人「村長を叩け。叩きのめせ。申秀、もっと小判をまけ」
申秀「ようし、ではこれは八房の命」
村人「おおお、申秀大権現、あんたは偉い犬神様じゃ」
申秀「さあ、これは伏の命。そして八房の命」
村人「空からバラバラ、小判の雨が降ってくる」
村長「申秀、お前は英雄じゃ。ああ、小判じゃ小判じゃ。小判はすべてワシのものじゃ」