呪いで人は殺せるか? 問題編11
スケキヨの家を出ると、警部は次いで隣の家に名探偵を連れて行った。そして五百子と対面させた。小野五百子は十代後半のごく可愛い女の子であったが、目のあたりに少し険があるようであった。「隣のおばさん、かなりヒステリックよね」と五百子は応接間のソファーに座りながら警部に言ったあと、扉の陰から心配そうに部屋を覗く両親のほうに向きなおり、「うちの両親は心配性。ほら、心配ないからあっちへ行って」と冷たい声で言った。「キミとスケキヨ君の関係って、どんな感じだったんだい?」名探偵はごく軽い雰囲気で尋ねた。五百子はちらりと名探偵を見たあと、「遊び友達」と答えた。「どんな遊びをしていたのか、もう一度話してくれないかな?」と警部が言った。五百子はツンと横を向き、「スケキヨの親から聞いているでしょ? それでだいたい合ってるよ」と言った。「キミ、何か変わった宗教してるんだってね?」と名探偵が尋ねた。五百子は、「別に」と答えたあと、「真言立川流。平安時代からある宗教だあから新興宗教でもなんでもない」と答えた。真言立川流、ああ、そうか。と名探偵は思い至った。スケキヨの部屋から片付けられた祭壇。そこに祀られていた神様は髑髏本尊、あるいは訶梨帝母。夜叉王の娘で子供をとって食べる恐ろしい女神。名探偵がそんなことを考えていると、「ブードゥー教なんて知らない。調べれば簡単にわかるはずなのに」と五百子は言ったあと、「まあ、話が聞きたいんならいつでも来て。私は逃げも隠れもしない。でも今日はこれから用事があるの。じゃあこれで」とさっさと席を立ち応接間から出ていった。警部は彼女の後ろ姿を眺めながら、「ほら、すごく怪しいであろう?」と名探偵の耳元で囁いた。