アングラ劇『犬神ぢごく変』 11-02
村長「おお、なんと。神様はそうおおせなのか?」
巫女「そうじゃ。犬は可愛がってくれた娘を恋しく思い、それで怨念も倍増する。さらに娘の悲しむ気持ちも犬神の怨念に溶け合ってゆく」
村長「ああ。それほどまで深い思惑があったのでは仕方あるまい。伏姫よ、ここはひとつ諦めて、お前の手で八房の首を刎ね飛ばしてやれ」
伏姫「なんと惨い村長様。それに村の人々。こんな巫女のたわごとを信じて、長年村に暮らした我々の家族をお苦しめあそばすとは」
村人「すべては村の安寧のため」
村人「おお、そうじゃ。伏姫よ。諦めてその犬を犠牲にしておくれ」
巫女「娘よ。その犬一匹が犬神となることで村は救われるんじゃぞ。尊いことだと思わぬか」
伏姫「ああ、そんな本当か嘘かもわからない巫女の言葉を、皆はお信じになるのですか」
村長「そう、すべては村の安寧のため」
村人「そう、すべては村の安寧のため」
村長「すべては村の安寧のため」
村人「すべては村の安寧のため」