アングラ劇『犬神ぢごく変』 10-01

   第十幕


 村役人の会議。村長をはじめ一同は車座になり顔をつきあわす。床には酒や肴が並べられて、皆ちびりちびりと飲みながら話し合っている。


村長「ということで、申秀に憑りついている犬神を追い出すには別の犬神をけしかけるのが一番であると、巫女殿は言われたんじゃ」
村人「その犬神の候補として選ばれたが申秀の家で飼われている八房じゃな」
村人「申秀の犬というより、娘の伏姫が可愛がっている犬といった感じじゃがな」
村長「そんな細かいことはどうでも良い。とにかく八房こそ犬神にするにふさわしい犬なんじゃよ」
村人「それで犬神はどうやって生み出すのじゃ? 八房をどういたせば犬神になるのじゃ?」
村長「巫女殿の言われるにはのう、まず大きな穴を掘って八房を土に埋めるのじゃ」
村人「土に埋めたらいくら八房でも死んでしまうじゃろう?」
村長「いやいや、すべて埋めるのではない。首だけは出しておいて、土に埋めるのじゃ」
村人「はああ、なんとも哀れじゃのう?」