アングラ劇『犬神ぢごく変』 09-02
長老「さて、巫女殿はお目覚めじゃ。妻よ、もうよいであろう。あとはワシが面倒を見る」
老女「さてさて、気づいたと言ってもワシが目を光らしておらねば、アンタは何をするか知れたもんじゃない。この助平のヒヒ爺い」
村長「夫に対して何たる言いぐさ。ヒヒ爺いとは何事ぞ」
巫女「まあ怒るな、村長にその妻。とにかく世話になったな」
村長「巫女殿、もう起き上がっても良いのでございますか?」
巫女「世話になったお礼にひとつ良いことを教えてやろう」
老女「良いこととはなんじゃ?」
巫女「犬神を退治する方法じゃ」
村長「申秀めに憑りついた犬神を、見事に払いのけられましょうや?」
巫女「ああ。それは難しいことではない」
老女「何の話をしておる? ワシにもわかるように説明しやれ」
村長「ああ、邪魔くさい奴だな。つまり絵師の申秀には犬神なるものが憑りついておる。奴の近頃の奇矯なふるまいも、地獄絵を描いておるのもそのためじゃ。さて、その犬神を追い出す方法をこれから巫女殿が教えてくれるとおっしゃっておるのだ」
老女「ふん、バカバカしい。あんたこそ自分に憑りついた助平なヒヒを取り除いてもらえ」
村長「なにをこの老婆め」
老女「なんだ、このヒヒ爺い」
巫女「二人とも黙れ。教えてやる。犬神を追い出すには、犬神をぶつければ良いのだ」