アングラ劇『犬神ぢごく変』 09-01
第九幕
神おろしの途中で倒れ、屋敷の離れに寝かされる巫女。その巫女の世話をする村長の妻。部屋には神おろしの祭壇が移されている。
老女「ああバカバカしい。なんでワシが巫女なんぞの世話をしなくてはならんのだ」
村長「おお妻よ。ならばワシが世話を変わってやってもよいぞ」
老女「ああ汚らわしい。お戯れもたいがいになさいませ」
村長「何が戯れじゃ?」
老女「口に出さずともわかっておりますぞ。この巫女は、ああ、言うのは口惜しいが、年は若いし顔も綺麗じゃ。お前さんなんぞに任せたら何をするやら、どこを触るやら、まことに知れたもんじゃない」
村長「それは誤解じゃよ、愛しい妻よ。村長であるワシがそんな嫌らしいことをするはずなかろう」
老女「いやいや。ワシが知らぬとでもお思いか? 田吾作どんの娘のミヨのところに昨晩忍んでいったのはどこのどいつじゃ? その前の夜に後家のお小夜のところに忍んで行ったのは誰様じゃ、さあ、そのさらに前の晩に隣村の林蔵の妹の寝間に忍び込んだのは何者じゃ。ワシが何も気づいていないとでもお思いか?」
巫女「ほほう、村長。そなたなかなかお盛んじゃな」
老女「おお、巫女め。気づいたか?」