十三番目の殺人 解答編07
アルミニウム、元素記号はAl。「ね、思い出しましたか? 一円玉の素材はアルミニウム。これも元素ですね? ということは三人とも元素にゆかりのある名前である、ということですね」名探偵に指摘され、三人はうっと息を詰まらせた。「容疑者はまた三人。これで振り出しに戻ったのか」警部はガクリとうなだれた。名探偵はそんな警部の肩を叩いて言った。「さあ、ここでもうひとつ思い出して欲しいんです。ボクは何度か言いましたよね? 中学に行ったならわかるはず、って」警部は顔を上げて名探偵の顔を見た。「ああ、言った。そういじめないでくれよ。ワシはその頃から勉強は苦手だったんだよ」名探偵は両手で空を仰ぎ言った。「ああ、勉強は苦手ですか? それでも何となく覚えていませんか? 中二の理科で習った奇妙な歌。水兵りーべ、ボクの舟」「ああ、それは。なんとなく覚えている。いい国つくろう鎌倉幕府みたいな?」警部の顔がパッと明るくなった。「それは社会科で少し違うような気もするけれど」と名探偵は少し眉を曇らせたが、「まあでも、そんなもんだね。それは元素記号を覚えるための唄ですよ」と笑った。「元素記号?」と三人の容疑者は顔を見合わせた。「そうです。玄宗和尚が残した十三のという暗号の暗号鍵は元素記号だったですよ。水兵りーべ、ボクの舟、七曲がる、シップスクラークか、なんてね」名探偵はそう歌いながら元素記号の表を書いた。「ナトリウムは十一番だ」と名取は言い、「リンは十五番」と土浦は言った。「犯人はあなたですね」と指摘され、円山はガクリと崩れ落ちた。元素記号の十三番、アルミニウム。一円玉の素材。「さあ警部、これで事件は解決です。犯人は一円さん。理由は恋愛問題、ですね?」