十三番目の殺人 解答編06
不意に警部はニカッと豪快に笑って言った。「暗号鍵に近いも何も、ワシにはもうわかったぞ」そしてボンヤリ座っている名取の頭を押さえつけて怒鳴った。「名取は塩化ナトリウム。昔、理科でならったぞ。ナトリウムはたしか元素の名前だ。名取雲慶、お寺の跡取りになりそこなったお前が犯人だ」意気揚々と勝ち誇る警部に名探偵はあわてて飛び付いて言った。「まだまだ。話は最後まで聞かなくちゃいけないですよ警部さん。慌てる乞食はもらいが少ない」そして名取から警部を引き離し名探偵は一息ついた。ソファーに座らさせられ肩を押さえられた格好で警部は不服そうに言った。「元素でナトリウム、これだけヒントがあるというのに、なぜ名取を捕まえちゃいかんのだ?」名探偵は少し呆れたように言った。「じゃあこの暗号にある十三という言葉にはどんな意味があると警部は説明するつもりですか?」警部ははたと考え込み、ウンウンと唸りだした。名探偵はそんな警部にかぶせるように言った。「元素とナトリウムという言葉だけで名取さんを捕まえようとするのは乱暴すぎますよ。元素といえばリンも立派な元素ですよ。中学の時、理科で習ったでしょう?」「な、なんと。そうか。リンも元素だったのか」警部はがっくりうなだれた。そんな警部の様子を見ながら、「ではオレは容疑者から外れていいですね?」と円山がホッとした顔で言った。「オレは一円さんで、元素じゃなくお金だし」名探偵は指をチッチと振って言った。「ああ、駄目ですよ円山さん。和尚さんは凝った人。更にひとひねりしているかも知れないのですから」「さらにひとひねり?」と警部の目が再び光った。名探偵は頷いた。「一円さんの一円玉は何で出来ているのでしたっけ?」