十三番目の殺人 解答編05
「ああ、そうそう。インターネットやメール、さらに量子コンピューターの話まで出てきてどんどんずれてしまいましたが、要するに暗号を解くには必ず暗号鍵というものが必要だ、ということを説明しようとしたのでした。いや、失敬。それで話を元に戻すと今回の暗号は数字の十三でした。この十三が犯人を指す言葉です。そしてそれを解く鍵がどこにあるのかと言いますと、それは和尚の名前に隠されている、そうボクはみたのです」と、そこまで黙って聞いていた容疑者の三人が一斉に口を開いた。「何だって? 和尚の名前だって?」「玄宗和尚?」「この名前のどこに鍵があるというのだ?」警部は、「うるさい、うるさい」と怒鳴って容疑者たちを黙らせたのち、先ほどの紙、ヘボン式ローマ字で和尚の名前を書いた紙を取り上げてつぶやいた。「ゲンソー」名探偵は振り返り、丸めた雑誌で警部を指した。「そうです、今なんておっしゃいました?」警部はポカンと口を開け、それから再びつぶやいた。「ゲンソ?」名探偵は大きく頷いて、「そうゲンソ。ゲンソですよ」と言いながら丸めた雑誌を広げて見せた。「さてそれでこれは和尚の愛読していた雑誌なんです。お寺の居住スペースに何冊かありましたよ現代化学。化学と言えば理科ですね。ここから導き出される言葉は?」容疑者の三人はきょときょととお互いの顔を見合わせた。そして、「ゲンソ、ゲンソ。ゲンソは元素?」と、そんなことを誰ともなくつぶやいた。「そうか、玄宗和尚のゲンソは元素とかけてあったのか」警部は目を大きく見開いて名探偵の顔を見た。名探偵はコクリと頷き、「和尚さんはダジャレ好きだったと皆さんも仰っていたでしょう? さあこれで、暗号鍵はずいぶん近くなりましたよ」と微笑んだ。