十三番目の殺人 迷走編06

 殺人の日の早朝、座禅に来たのはその三人のみで、あとは誰も来なかった。いや、その三人の後は警察が駆け付け現場を囲んでしまったので、もし他の座禅仲間が来たとしても、この三人以外に誰も入れない状態となっていた。「それで三人が容疑者となったわけだ」と警部は言った。名探偵はクスリと笑った。「それはおかしいですね? それならこの三人以外でも和尚さんを殺すことができますよ。だって和尚さんがお寺の門を開けて土浦さんが来るまでの間に犯人は犯行を済ませて立ち去るだけでいいのですから」警部はエヘンと咳ばらいをし、「それがそうはならぬのだ」と言った。「さあ、どうしてです?」と名探偵は悪戯っぽく尋ねた。警部は言った。「和尚が門を開けるのを向かいの家の早起き婆さんが見ていたのだ。そして婆さんはそのまま窓から門を見ていたが、パトカーが到着するまでの間に門から入って行ったのは三人きりであったと証言したのだ。さらに言えば寺の三方は崖に囲まれ入口はこの門しかないのだ」「そうなると第一発見者のリンさんがやっぱり一番怪しいわけだな?」と円山が横を見て言った。「バカ言え。犯人は和尚を殺した後そのまま寺内のどこかに隠れて第一発見者が来るのを待っていたとも考えられるだろう?」と土浦が反駁した。「いや、そもそも和尚さんを殺害した後、犯人がわざわざ寺内に残る理由はなんだ? さっさと逃げちまえばいいじゃないか?」名取が言った。名探偵は三人を見回して言った。「まあ、それは誰が犯人かわかれば、自ずと理由も知れるでしょう。さあ、それより何より重要なのは、和尚さんの残したダイイングメッセージ、十三の意味ですよ。それさえ解ければ犯人は分かるのです」一同はシンと静まり返った。