十三番目の殺人 解答編01
「さあ皆さん。それでは答え合わせ。と、いきたいところですが」名探偵はいったん言葉を切ったあと、「その前に少し予備知識として思い出していただきたいことがあります」と続けた。その言葉を聞いて、「思い出すことって?」と名取が少しぶっきらぼうに尋ねた。「まだじらすのかい?」と円山も不服を言った。「いい加減にして欲しいぜ」と土浦はそっぽを向いた。名探偵はそんな三人の容疑者を代わる代わる見てから、少しなだめるように、「まず前提を思い出していただくこと。これが、これから謎解きをする助けにもなりますので、軽くおさらいをするのを許してください」と言った。警部は犯人が誰なのか知りたくて知りたくてカタカタ貧乏ゆすりをしていたが、しかしここで名探偵にへそを曲げられても面白くない、ひとつ我慢せねばと苦虫を噛み潰したような顔をして、「うむ」と黙って頷いた。そんな警部の顔を見て三人の容疑者も諦めて待つことにした。名探偵は一同のその殊勝さに満足したように頷き、「では、まず第一に思い出していただきたいのは、被害者である玄宗和尚は冗談の好きな人物であった、ということです」と言った。そして、「和尚は冗談好きであった、なのでボクは彼が最後に残したダイイングメッセージもそういった一種の暗号ではないか、と考えました」と続けた。警部は、「ああ」と相槌を打って、「たしかにあんた、そんなこと言っていたな? この十三は暗号である、とか何とか」と問いかけた。名探偵は頷き、「十三が暗号だと言ったのは警部ですが、まあボクも同感です。この十三の文字こそ犯人を指し示す暗号なのです」と肯定した。そして、「少し長くなりますよ」と断りをいれてから暗号についての講釈を始めた。