十三番目の殺人 問題編06

 あだ名の由来と聞いてまず円山が頷いた。「そうそう、オレは円山一って名前だから一円さんと呼ばれたよ。上から呼んでも山本山、じゃあるまいし、順番を逆にして何が面白いんだか。ついでに間の山を消して一円さん、だなんてさ。ちぇっ、一円だなんて安すぎるじゃないか。せめてもうひとひねりして千円さんとかにしてくれてもよさそうなものを」円山の次に土浦が口を開き、「オレの場合は麟太郎そのままのリンさんだったぜ」と言ったあと、「俺にも何か変わったあだ名をつけてくれればよかったのに」と少し不服そうに続けた。二人の話を聞いた後、「それで」と名探偵は最後の一人、名取の方に向き返り、「あなたにもあだ名はありましたよね?」と尋ねた。名取はまるで軽い調子で頷いて、「ああ。さっきも言った通りオレはシオーさんと呼ばれていたよ」と答えた。「シオーさん? 何故に?」それまで黙っていた警部が不意に興味を示して名取を見た。名取は警部の方を見て、「なに、つまらないダジャレでさ。ほら、オレの苗字が名取だからナトリウム、塩化ナトリウム。それで塩だってさ」と答えた。「ははあ、名取だからナトリウム。それでシオーさん」と警部は大きく頷いた。名探偵はソファーから少し体を起こし丸めた雑誌を警部の方に突き出して、「ねえ、警部。さすがにこれで和尚さんのダイイングメッセージ、分かったんじゃないかな?」と笑いかけた。
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 さてここで再度読者に挑戦状です。容疑者三人、一円さん、リンさん、シオ―さんのうちの犯人はいったい誰でしょう。わかった方はお知らせください。