アングラ劇『犬神ぢごく変』 05-02

獄卒「これは獰猛なニワトリに粉飾をほどこしたものです。まずこのニワトリたちをけしかけてあなたたちをつつきまわらせます」
平吉「わあ、痛い痛い。なんて鋭いクチバシだ」
申秀「おお、いいぞいいぞ。もっと騒げ。泣き叫べ。おお、素晴らしい。素晴らしい地獄絵だ」
獄卒「さあ、あなたには溺れてもらいます」
東一「何だって? ああ、大きな岩を足に結び付けやがって」
獄卒「あなたに何の恨みもないが。まあ、これもお金儲けだと諦めてしばらく溺れてください」
東一「わあ、血の池にはめやがった。わあ、ドロドロして気持ち悪いし、どんどん沈んでいくブクブクブク、助けてくれ!」
申秀「いいぞいいぞ。血の池に溺れる亡者。その苦しくゆがんだ顔が欲しかったんじゃ。さあ次に参ろう」
平吉「今度は何をする気だ? 鉄釜に柄杓など持ち出して?」
獄卒「たいしたことではありませんよ。この沸き立った熱湯を少しかけさせてもらうだけですよ」
平吉「わあ、熱い熱い。火傷をするじゃないか」
申秀「あはは。面白い逃げろ逃げろ。その苦悶に満ちた表情がたまらんじゃないか。筆が進む。筆が進むぞ」
獄卒「さあ、次はあなたの番です」
東一「オレはもういい、ゲホゲホ。あの赤い泥水を散々飲んでおまけに着物もずぶ濡れだ」
獄卒「だからその濡れた着物を乾かすのにもちょうどいい地獄を用意しました」