十三番目の殺人 問題編04

「それでその暗号、どうやって解けばいいのだ?」と警部は名探偵に詰め寄った。名探偵はうっとうしそうに警部をグイッと押し返し、「それを考えるのが警部の仕事でしょう?」と口を尖らせたのち、「しかしまあ、もう少しヒントがあってもいいかもしれませんね?」と続けた。「ああ、頼むよ名探偵。キミだけが頼りだ」警部は情けない顔で名探偵にせがんだ。名探偵はハァと大きくため息をついたのち、「仕方ありませんね。警部にはまったくかなわないや」と言ったあと、少し目をキラリと光らせて「玄宗和尚という、その名前の音がね、まず重要な鍵なんですよ」と言った。「オン?」一同は顔を見合わせて首を傾げた。名探偵は気にする風もなく、「そうです、音です。オンが鍵なんですよ」と、もう一度その語を強調したあと横目でチラリと警部を見て、「さあ、ここまで教えてあげたのですから、まず自分で考えてくださいな」と言った。警部は自分の顔をわしづかみにし、「ううん、ううん」と唸りながらその手をグイグイ回したので、表情はまったく苦悶にゆがんでいるように見えた。容疑者である三人も額に手を当てたり腕を組んだり、それぞれ唸りながら考え込んだ。名探偵はしばらくその様子を眺めていたが、これではらちが明かないと思ったのか、「まあ一度、和尚さんの名前をローマ字で表記してみてください。ヘボン式ローマ字でね。そうすれば見えてくるものがあるはずですよ」と言ったあと、「警部も中学には通ったんでしょう? もう少ししっかりしてくださいな」と悪戯っぽく笑った。
◇ さあ、これでいちおうの材料は出そろいました。ここで分かった方はニヤニヤ笑いながら読み進めてください。