十三番目の殺人 問題編03
「この殺人に絶世の美女が関わっている、となると。ちょっと艶っぽい想像なんかも働いて、俄然、興味も湧いてくるのですがね」と言ったあと、名探偵は軽く首を横に振り、「残念ながら、これはそんな色っぽい話ではないんですよ」と再び一同を見回した。一同は怪訝な顔でお互いの顔を見回してから、「ではその和尚の名前、玄宗和尚のその名前はこの謎解きに、いったいどう関わってくるんですかね?」と尋ねた。名探偵は軽く、「うん」と頷いてから、「それを説明する前にですね、この玄宗和尚はどんな性格の方であったか、誰か教えてくれませんか?」と尋ねた。三人は顔を見合わせてからそれぞれ話し出した。「和尚はヒョウキンで、なんだかとぼけたことが好きな人でしたよ」「そうそう、ダジャレや冗談というものが好きで、わけのわからない暗号を使って、よく人をけむに巻いていたな」「そうそう、我々の名前もいつもあだ名で呼んでいましたよ。オレは一円さんで名取さんはシオ―さん。土浦さんだけはそのままリンさんだったかな?」名探偵は、「ああ、やはりそうですか」と納得したように頷いてから警部の方を振り返り、「さあ生前の和尚さんの性格はだいたいわかりましたね?」と尋ねた。警部は、「うむ」と顎に手をやり、「つまりダジャレ好きの、冗談好きの、ちょっと変わった和尚さんであったわけだな」と答えた。「その通り」と名探偵は頷き、「つまりこの十三という数字も、そういったシャレや冗談のたぐいとみるのがよろしかろう、とボクは思ったわけですよ。楊貴妃や玄宗皇帝なんて、絶世の美女も中国史もまったく関係ないですよ」と笑った。「そうか、十三は暗号なのか?」と警部は少し鼻息を荒くした。