十三番目の殺人 解答編03

「では今回の暗号、十三という数字がどういった暗号であるのか? これは先ほど言ったような言語や、何らかの部族のみが習得している語ではなく、普通に現代文明を共有している人間ならば理解できる、普通の数字、アラビア数字の十三です。その普通の十三がどうすれば暗号になるのか、そこで次の暗号形式、鍵というものが出てくるわけです。暗号は先ほども言った通り表記されたもの、あるいは表記された記号、それのみでは意味をなさないもの、あるいはまったく別の意味となるものです。どうすればそれが意味あるものになるのか、そこで重要になるのが暗号鍵というものです。暗号鍵という言葉はインターネットやメールなどで時々目にした人もいるでしょう。あれと同じです。メールの暗号化というのはメールに書かれた文章を暗号化することで意味をなさない文字列に変換することを言います。そして同時に相手にだけその暗号鍵を送ることを言います。メールを傍受した第三者には、そのメールは意味のない文字列ですが、暗号鍵を持つ正規の相手はメールの文字を読むことが出来るという仕組みです。こうした暗号と暗号鍵を別々に送るという方法は、ずいぶん昔から行われていたようで、紀元前五世紀ごろのスパルタで使われていたスキュタレー暗号などが知られています。秘密の文章を送るためスパルタ人は棒に革ひもをまいた状態で文字を書き、棒から離した状態で意味のない文字を書き足しました。そのため革ひもだけ奪った者がいたとしても、革ひもの文章は意味をなさず、伝えたい言葉はその棒を持つものだけが受け取ることが出来るといった仕組みです。この場合、暗号は革ひもに書かれ、それを解く暗号鍵は棒であったというわけです」