十三番目の殺人 解答編02
「暗号というのは、ある人がある人だけに分かるように何らかの加工を施した文字や記号のことを言います。辞書によると、自分と相手以外に内容がもれないようにするための秘密の記号、とあります。すなわち暗号というものは表記されたそれそのもののみで意味が分かるようでは用をなさないものなのです。文字の配列なり法則なりに何らかの工夫がなされて初めて暗号となり得るのです。しかし暗号の中には忍者文字であるとかヲシテ文字とか、見るだけで読める暗号もあるのではないかと指摘される方もいるかも知れません。しかし考えてみてください。あれはそれぞれの文字を習得している者たち、忍者や古代人の間でのみ通用するものなのです。その存在を知らないものにとってはまるで意味をなさないただの記号となるのです。そう考えを広げていくと、これは同時に各国で使用されている言語にも言えるということがわかります。言語も一種の暗号なのです。習得している者にとっては普通に読める文字であっても、それ以外の者にとっては何のことやらチンプンカンプン。奇妙な図形にしか見えなかったりもするものです。例えばアラビア語を江戸時代の日本人が見て、それを文字と解することができたでしょうか? エジプトのパピルスに描かれた文様を見て、それを文字と解することができたでしょうか? それと同じです。ある一定数の人が見て解することができる文字であっても知らない者にとっては暗号となり得るのです。文字も記号も絵画でさえもそれを解する共通の知識がなければ、なかなかその解読というのは難しい、いや不可能に近いものとなり得るものなのです。まず最初の暗号はこうした言語のようなものであると考えていただいて結構です」