十三番目の殺人 問題編02

「しかしその十三がボクたちに何の関係があるのですか?」と土浦が言った。「名前の字画が十三文字であるとか?」と字画の最も少ない円山が言った。「十三なんてありふれた数字が一体誰を指すというのです?」と名取も不貞腐れたように言った。名探偵はニコリと笑った。「そう、犯人はこの数字が何を意味しているのか分からなかった。だからいい加減な消し方で、この重要な証拠を残してしまったのです。ところが私はその数字を見て、皆さんの名前を見て、犯人が誰なのか分かってしまったのですよ?」警部は再び驚いて言った。「なんだって? この十三は名前を表しているのですか?」名探偵はさも当然のように、「そうです」と頷き、「まず和尚さんの名前。これが振るっていますね」と言った。「和尚さんの名前?」と一同は顔を見合わせた。「和尚の名前は玄宗さん」と土浦が言うと、「玄宗と言えば、唐の時代にそんな名前の皇帝がいたような?」と円山が確認するように隣を見た。その視線を受けて名取が、「ああ、九代目の玄宗皇帝。たしか皇帝と和尚は漢字も同じだったはずだ」と頷いた。そして、「玄宗皇帝といえばその奥さんが中国史上に名を馳せる絶世の美女、楊貴妃だったよな?」と問いかけると、「ああ、唐が倒れる原因を作った傾城の美女」と円山が頷き、「それが何か関係あるのですか?」と土浦が今度は警部と探偵を見返して言った。中国史に疎い警部は三人の会話がよく呑み込めずポカンと見ているだけだったが、名探偵は流石に知識があるらしく、「そうそう、楊貴妃の旦那さん、玄宗皇帝と同じ名前ですね」とパチパチと軽く拍手をしてみせた。三人はそれを見て、「とするとこの殺人には絶世の美女が関係しているということですか?」と尋ねた。