呪いで人は殺せるか? 02-02

「しかし親まで容疑者にしなきゃならないとは。なんとも世知辛い世の中になったもんだね?」と警部は渋い顔で愚痴った。「まあ、時の流れには逆らえませんからね」と名探偵は笑い、「でも警部、時の流れを無情に思っても詮無き事です。ボクたちはここから一歩踏み出さねばなりません」と続けた。「そうだな。時の流れを無情に思っても仕方ない。では次は何をどう考えていけばいい?」警部は名探偵の顔を見た。名探偵は微笑んで、「謎はふたつ。密室殺人と消えた凶器。警部はそう言われていましたね?」と尋ねた。警部が、「うむ」と頷くと名探偵は、「では、警部はそのふたつの謎の、どちらから解いていくことが解決への近道とおもわれます?」と尋ねた。「キミは質問してばかりだな」と警部は少し不平を言い、「まあ、どちらかと言えば密室殺人、こちらの方から攻めるのが良いのではないか?」と答えた。名探偵は人差し指を一本立て、チッチと言いながら左右に振り、「残念。はずれです」と言った。そして、「次に考えるべきは消えた凶器の謎なんです。これにつながるような発見をボクたちはしたではないですか?」と笑った。「発見? いったいいつ?」と警部は驚いて名探偵の顔をまじまじと見た。「まあ、それを説明する前に、まずボクがたてた仮説を聞いていただきますね?」名探偵はそう言って珈琲を一口飲んだあと、こんな話を始めた。「凶器が消えるという謎は、昔から探偵小説などにもよく取り上げられたテーマですがね。その中のひとつにイギリスの作家ジェプスンとユーステースの合作『トルコ風呂』なんて小説があるんですよ。ボクはこれが今回のヒントになるかと思いましてね、そんな目で部屋を見たのです」