呪いで人は殺せるか? 問題編02

「警部は本当に呪いによって殺人が行われたと考えているのですか? それとも密室殺人なんてものを認めたくないから、これは呪いの仕業であると言って現実逃避をしているだけなのですか?」と名探偵は立ちあがり、首を傾げて尋ねた。警部は苦しそうな顔をして、「そりゃ、他に合理的な説明がつくなら何も好んで呪いなど信じたいわけではない。だがしかし、ワシにはどうしてもわからんのだ。やはり呪いの仕業にしたほうが理屈が合うような気がするんじゃよ」と言い、「それに呪いとするならば、容疑者もはっきりわかっておる」と続けた。「へえ? 呪いならこの殺人の犯人に目星がつくと言われるのですか?」と名探偵は少し目を丸くして興味津々に尋ねた。警部は大きく頷いて、「そう。スケキヨに呪いをかけたのは隣の家の小野五百子という娘だ」と断言した。「証拠は?」と名探偵は即座に聞いた。警部は急に自信を取り戻しフフンと鼻で笑ったあと、「その五百子の家から、『スケキヨ』というタスキを付けたブードゥー教の人形が発見されたんだよ」と言って懐から一枚の写真を取り出した。名探偵は黙ってそれを受け取り、その醜い人形を見た。それから人形の腹に突き立てられた五寸釘を見た。「これがスケキヨ殺しの凶器、というわけですか?」名探偵は少し呆れたような顔をして写真を警部に返した。警部は至極真面目な顔で写真を懐にしまいながら、「ブードゥー教か何かは知らんが、その隣家の娘は奇妙な宗教にはまっていたということだ。そしてその宗教の呪いをスケキヨにかけたということだ」と言った。「いったい誰からそんな話を聞いたのです?」と名探偵は尋ねた。警部は、「うむ」と大きく頷き、「スケキヨの家の山伏に聞いた」と答えた。