01魔界研究部 08

 魔界研究部では毎週金曜日の放課後、部員それぞれが一週間の間に調べたり聞きこんだりした事象や仮説を発表し合う定例会がある。多聞が沙羅に連れられて部室に来た日はそんな定例会の日であった。揖保神部長が七不思議について説明をし、先輩たちは熱心にメモを取っていたが、多聞はあまり興味もわかずボンヤリと眺めていた。やがて定例会は終わり、先輩たちが先に帰った。後片付けは一年生の役目だということなので、五人は残って片付けを始めた。筋肉もりもりのゴリラ君、もとい馬立牛松は椅子を並べなおし、ショートボブの女の子、月読琴音(多聞が後頭部を見て思い描いていたよりも、もっと可愛いかった)は机の上のペットボトルを集めてゴミ箱に捨てていた。クラスメイトの美形君、祇園雪之丞は尾毛ハタキで本棚の埃を落とし、沙羅はホウキとチリトリで床のごみを集めていた。「ボクも何かしなくちゃね?」と多聞が恐る恐る聞くと沙羅が素敵な笑顔を見せて、「そこにバケツとゾウキンがあるよ」と楽しげな提案をしてくれたので、仕方ない、多聞は廊下の水道で水を汲み、ゾウキンを絞ってテーブルを拭いた。後片付けと部室の掃除はだいたい十分ほどで終わり、多聞の初めての部活体験はここに終了した。「死霊の門こそが、七不思議の妖怪たちが活動している魔界への入口だって、部長言ってたね」と部室の外で沙羅と多聞がそんな話をしていると、「君たち、付き合ってるの?」とショートボブの琴音が話しかけてきた。多聞は驚き、慌てて訂正しようとすると、「うん、ラブラブなんだ」と沙羅は多聞の方を見て天女のように微笑んだ。