01魔界研究部 06
「そもそもこの学校の七不思議は世の中の様々な学校で噂される七不思議とは様相を異にしています」と揖保神部長は難しい言葉で話しだした。「様相を異にするってなに?」と多聞が聞くと、「ちょっと違うってことよ」と沙羅が耳打ちしてくれた。部長は気にせず話をつづけた。「例えば他校で噂されるトイレの花子さん。これは三階の三番目のトイレに花子さんなるモノがいて、そのトイレを三回ノックして呼びかけると花子さんが現れ、呼んだ人をトイレに引きづりこんでしまうというものです。また動くベートーベンは夕方五時半に音楽室に行ってピアノを弾くとベートーベンの肖像画が笑い出すというものです。他の不思議もこれに類するものなので割愛いたしますが、これらの例でもわかる通り、他校の七不思議は一定の条件さえ満たしてあげれば、誰でも簡単に目撃することが出来るものとして存在しているのです。ところが我が校の七不思議は、不思議なのか何なのか、まったく意味もわからないまま、七不思議、七不思議と言われながらただ存在しているものが多くあります。というより、なぜ校舎内にそんなものが存在するのか、というあたりから、すでに変なものが多くあります。そして不思議、不思議と言われながらも、どう不思議なのか、その具体的な不思議さが、どこか欠如しているのです」多聞は首を傾げて沙羅の方を見た。沙羅は再び多聞の耳元に口を寄せ、「要するにうちのは、何が不思議かわからない七不思議がただ存在しているってわけね」と教えてくれた。「何が不思議かわからないけど七不思議?」多聞の頭はすっかりこんがらがってきた。