01魔界研究部 05
「じゃ、座って」と言われたので、あたりをキョロキョロと見わたすと、部屋の入口付近に丸椅子が数個重ねてあった。多聞がその一つを抜いて座ると、沙羅はそこにまだ三つほど重なったままの椅子の上にそのまま座った。やっぱり変な奴だ。多聞は苦笑した。思いがけず変な部活に入る事になっちゃったけど、彼女と一緒なら、まあそれはそれで楽しいかもしれない。魔界、魔界と言っても、本物の魔界じゃなくて部活動なら安心だ。そう心を整理してから改めて部屋の中を観察した。正面奥の部長のいるテーブルの廻りに座っているのが先輩たち、それでテーブル席を外れた後ろ、何もないところに丸椅子を置いて座っているのが一年生、というところか。とすると一年生はボクを含めて五人。真ん前の奴はゴリラみたいに体格が良くてその右斜め前の女の子はサラサラのショートボブ。後頭部しか見えないけれど、何となく可愛い感じでいいね。そのさらに斜め前にいる奴は、と多聞は目をやり、思わずのけぞった。なんとアイツは、同じクラスのモテモテ美形君じゃないか? 多聞は驚きのあまり座ったまま転び、皆の視線を集めてしまった。「なにしてるの」と沙羅が尋ねて、「いや、何でも」と口の中でゴニョゴニョ言って座り、先輩たちに「すみません」と謝った。「おい、新入部員君。真面目に聞いてなくちゃ魔界に行けなくなっちゃうぜ」と、先輩席の一人がおどけた感じでたしなめた。多聞はもう一度、「すみません」と謝って下を向いた。「魔界に? 行く?」といくつも疑問符を浮かべながらも、そこからは先輩たちの話に耳を傾けることにした。