そして誰も猫になった007
「待った、待った」と私は歌を遮った。バードは不機嫌そうに私を見た。私は手を上げて言った。「君の歌はどうも縁起が悪くていけない。このままいけば十人のシュメル人は皆殺しになってしまいそうだ。五人目からは私が変わって詩を書こう」「おお、さすがは吟遊詩人」とフェイクが鋭い目つきで言った。彼はどうも、私に何か良くない感情を持っているらしい。私はチラリと彼を見たが、すぐにその視線を無視して、そこにあったメモ帳にサラサラと歌の続きを書いた。ウクレレは皆の様子などまるで気にもとめずに陽気な雰囲気で楽器を弾いた。私は詩を書き終わると、それをバードに渡した。バードはそれをチラリと見て、「フン」と鼻を鳴らしてテーブルに投げた。「こんなもの歌えるか」と言って座った。その膝にムギワラの猫が飛び乗った。テーブルに落ちたメモは、サングラスが拾った。「では私が代わりに歌うかな」と、サングラスは立ち上がり、ヒョウ柄の猫がその膝から飛び降りた。「五人目のシュメル人、空に舞い上がった。鳥と共に海を渡り、ムギワラの猫となった。六人目のシュメル人、謎に立ち向かった。獅子の背にまたがり、サビ猫の王となった。七人目のシュメル人、神に祈りを捧げた。祈りは天に届き、黒猫が遣わされた。八人目のシュメル人、曲を奏で続けた。音色は時を超えて、白い猫となった。九人目のシュメル人、大きな魚をさばいた。魚の腹の中から、サバトラの猫が出てきた」そして、「十人目のシュメル人」と、サングラスが歌い出したところにフェイクが不意に割って入り、ガラガラ声で怒鳴った。「十人目のシュメル人は恐ろしい殺人鬼だ。島のシュメル人をことごとく殺して最後に自分も死ぬのだ」ウクレレが楽器の演奏をやめた。