そして誰も猫になった006
食事の後、私はシェフに尋ねた。「それで、あと二つの空席はいつ埋まるのですか?」シェフは皿を片付けながら私を見て、「ジプシーさんは好奇心が旺盛ですね。残りの二人も、まあ明日までには来るでしょう」と言った。あと二人で十人。この十人がシュメル人の絵柄に対応しているとするなら、残りは翼の生えた女と蛇の顔を持つ男。対応する猫は三毛と灰色。私がボンヤリとそんなことを考えながら見ていると、ウクレレがケースから楽器を取り出して皆に言った。「お腹もくちくなったことだし、ひとつ音楽でもお聞きになりませんか?」「いいね」とサングラスが指を鳴らした。皿の片付けを終えたシェフがワインをグラスに注いで皆のテーブルに並べた。「拙僧はダメだと言っているのに」とビショップはワインを押し返し、自分でキッチンから水を入れたコップを持ってきた。ウクレレはそんなやりとりは気にも留めないで、楽器を弾きはじめた。それはハワイアンの陽気なリズムの曲であった。その曲を弾きながらウクレレは皆に声をかけた。「誰か歌ってくれる方はないかしら?」私はシェフと顔を見合わせた。「ダンスならできそうだが歌はちょっと」とサングラスが顎に手を当てた。「オレが歌おう」と鳥の仮面をつけた男、バードが立ち上がった。そして曲調にそぐわない妙な調子で歌い出した。「一人目のシュメル人、裸になって死んだ。高い塔から飛び降りて、頭が砕け散った。二人目のシュメル人、世界を呪って死んだ。両腕を胸の前に組み、すべてを地獄に変えた。三人目のシュメル人、空気に溶けて死んだ。どこから来たかも知れず、どこへ去ったかも知れず。四人目のシュメル人、踊り狂って死んだ。目を大きく見開いて、まるでタコのように」