そして誰も猫になった005
やがてシェフが料理の皿を運んできて、私たちの前に並べた。そして、「エビとマッシュルームのアヒージョです」と言った。ビショップは自分用の皿を運んできた。その皿の中にはエビも見えて、他の皿と何ら変わらないようであったが、きっと戒律で禁止されている何かが抜かれているのであろう。ビショップが座ると再び黒猫がその膝に飛び乗った。シェフは丁寧に皆の前に皿を置いていったが、数えるとそれは全部で八つあった。「二つ余るようだが?」とフェイクがシェフを見た。「これでいいのです」とシェフは澄まして答えてから、自分の席についた。その膝にサバトラが飛び乗った。と、その動作を待っていたかのように、開いていた一つの席がムクムクと盛り上がり、ごわごわとした髭を蓄えた、ターバンの男が現れ出た。「一体あなたはどこから出て来たのです?」と私は驚いて尋ねた。「遙か時空を超えて」と髭の男は不敵に笑った。「真面目な人をからかっちゃいけませんよ」とシェフが言った。そして私に、「彼はインドの魔術師と自分の事をそう言いますが、実はネパールのマジシャンなのです。今のは簡単な鏡のトリックですよ」と教えてくれた。インドの魔術師、マジシャンは何も言わずにまたニヤリと笑った。その膝の上にチャトラの猫が飛び乗った。「ここの猫は妙に人懐っこいですね」と入口で声がした。振り向くと黒い大きな丸眼鏡をかけた紳士がヒョウ柄の猫を抱いて立っていた。「彼が八人目の人です」とシェフが言い、「さあ、あなたも冷めないうちにお召し上がりください」とサングラスの男に席を勧めた。サングラスは席につき一同を見て言った。「私はミネソタの卵売り。コケコッコ」彼は見かけによらずお茶目な男のようであった。