02 黄土色の悪漢 07

 そこに山蛭毒大夫も来た。「いいざまだな」と桃之介を見上げ、「さてどう料理してくれようかな」と権藤に問いかけた。「さて、それなんですがね師範代。こいつの、このちっこい鼻をへし折ってやってもいいんですがね、俺はどうも、こいつが女に思えてならねえ。一度ここで素っ裸にひん剥いて、あそこをじっくり眺めさせてもらいたいと思ってね」「なるほど、そいつは面白い。ついでにケツにキュウリでも突っ込んでやるか」山蛭と権藤はいやらしく笑った。「何を」と桃之介はもがいたが、権藤の万力のような馬鹿力で首根っこを締めあげられては手も足も出るものではない。山蛭はもがく桃之介の足を左手で抑え込み、ジーンズに手をかけベルトを外しにかかった。と、そこにどこからともなく石つぶてが飛んできた。そして山蛭の後頭部にガツンと当たった。「いてて」と山蛭は頭を押さえてうずくまり「なに奴?」とあたりを伺った。そこにもう一つ石つぶてが飛んできて、今度は権藤のこめかみにガツンと当たった。「ぎゃっ」と悲鳴を上げ権藤は桃之介を掴む手を離した。桃之介は地面に転げ落ち、ゲホゲホと少し咳き込んだが、いつまでもうずくまっているわけにはいかない。すぐに態勢を立て直して走った。「野郎、逃げやがった」と権藤はこめかみを押さえながら舌打ちをした。「またそのうち会うさ。楽しみはその時までお預けだ」山蛭は陰気な目をして虚空を睨み、クククと笑った。「それにしても、この石つぶてをぶつけた奴は何者だ。そいつも探しだして、八つ裂きにしてくれねばならんのう」山蛭は立ち上がり、あたりを伺った。