07 黒魔術同好会

 どうしても部活に入らなければいけないというので雪は黒魔術同好会に入ることにした。あまり活発に活動している様子もないし、これはきっと帰宅部のたまり場に違いないと踏んだからだ。掲示板に張り出された部員募集のポスターも、吹奏楽部やバスケ部がどんと真ん中に大きく貼り出して、やる気がみなぎっているのに対し、黒魔術同好会は掲示板の外枠の隅っこの一番下の方に小さく「部員募集」と書いたポストイットを貼っているだけだった。字体も妙にこねくり回したような奇妙な雰囲気で、ロマンチックなようなセンチメンタルなような何とも世間に背を向けた風情。これがとても気に入った。入部届けの提出先も書いてなく、連絡先も書いてなく、いったいどうすれば入部できるのかは全く分からなかったけれど、もし誰かに「何部に入ったの?」と聞かれたら「黒魔術同好会」と答えようと雪は決めた。「まあこれで一安心、悩みが一つ消えたよ」と呑気な顔で掲示板から目を離す。と、不意に背後から奇妙な気配、振り向くと明るい日差しの中そこだけぽっかり暗い闇のような場所にボーっと人が立っていた。「本当にうちでいいんですね?」と陰の中から目だけやたらとギョロギョロさせたひょろりと背の高い男が変な微笑みを浮かべて言った。首からは小さな髑髏を下げて手には古びた羊皮紙の怪しげな本を抱えている。くちゃくちゃの髪の毛の中にはコウモリの巣もあるようである。

「ようこそ。黒魔術同好会へ」

 雪はあわてて回れ右をし、教室へと駆け戻った。黒魔術はやめておこう。あんな変な人になったら大変だ。