ボーンコレクター 02-11
「幾千年もの退屈な時が流れ」と少女が話し始めた時、ザザザと砂嵐のようなものが目の前に現れ、そのままテレビのチャンネルが切り替わるようにあたりの風景が変わった。薄暗い街灯に電話ボックス、ボーンコレクターはその透明なガラスの過去の中、少女の小指の首飾りを握りしめて、どうやら眠っていたようだ。奇妙な夢に翻弄されてまるで酩酊したようになって。「ども、もう行かなくちゃ」と彼は電話ボックスのドアを開け、そこから外によろけて転んだ。そしてそのまま道端にしゃがみこんで吐いた。ボクはいったいどうなつちまったんだろう。考えてもよく思い出せない。「とにかく品川じゃ駄目なんだ」と彼は立ち上がり、ヨロヨロと駅の長い高架下を抜けて線路沿いの坂道を登った。そしてソニー通り、道灌通り、御殿山通りと歩き、居木橋を渡った。そうするうちに、先ほど吐いた効用か意識も若干もどってきたようで、彼には自分の行先がぼんやり判別できるようになった。「そう、百反坂を通ってソニーの工場を過ぎたあたりに彼女の家はあったはず」彼はフラフラとした足取りながらも、もうすっかり道を思い出したようであった。そして品川駅の電話ボックスを出てより、約一時間もかかって、ようやく目指す家へとたどり着いた。そして狭い庭を通り越し、平屋建てのその家のドアをノックした。