ボーンコレクター 02-11

「幾千年もの退屈な時が流れ」と少女が話し始めた時、ザザザと古いテレビの砂嵐のようなものが目の前に現れ、そのままチャンネルが切り替わるように品川の電話ボックスの薄暗い街灯の下にいた。少女の小指の首飾りを握りしめボーンコレクターは立ち上がった。ヨロヨロとボックスから歩き出し道端にしゃがみこんで吐いた。ボクはいったいどうしてこんなところで寝ていたのだろう。明るくなりかけた空を見ながら駅のホームに戻った。山手線はすでに運行していたので、ボーンコレクターはそれに乗り込み、新宿へと向かう。もちろん骨骨研究所に出勤するためである。まだ早朝なので所長は来ていないと思うけれど、合鍵は持っている。骨の陳列台の前に鎮座して誰もいない薄暗い部屋でひとり骨を眺めるのも悪くない。骨たちは様々な物語を語ってくれる。形而上学的なタブロー。骨とボーンコレクターの面会。時に妖しく時に艶めかしく。彼はいつか骨をひとつ組み上げて、それに手早く服を着せる。骨は可憐な少女となり大きな虎の背に乗って月の砂漠に旅立つ。月の砂漠のオアシスにはニムキシュ族が住んでいて鬼の心臓の隠し場所を教えてくれる。鬼の名前はマラーハス。鼻水から生まれた少年を従えカワウソを求めてさまよっている。虎に乗った少女はマラーハスと対決し、結局は心臓を見つけられずに殺されて、もとの骨に戻る。ボーンコレクターは悔やむ。結局もとの骨に戻るのなら組み上げなければ良かった、と。少女は彼を慰める。「やがて死ぬのはあなたも同じ。そう苦しまないで。生まれたからには生きなくちゃ」