ボーンコレクター 02-10

 ボーンコレクターは目をつむり、少女の語る古い島の歴史を聞く。五つの一族はそののち小競り合いを繰り返しながらも、それぞれ分をわきまえて互いに侵攻しすぎることなく、長らく小康状態を保って暮らした。西洋の物語だとそういったところに外から狼が来ることになっている。村人たちと共存することの苦手な若者が村から追い出され、森の中で強い狼に育って帰ってくる。そして村を焼き払い、村人たちを従わせ、強い王となる。

「島ではそうはならなかったわ」と少女は言った。大きな飢饉がおきた年、五つの部族は連合して力を合わせそれを乗り切り、それぞれの特徴を有したまま、一つの島民としてまとまった。土の一族は盲目であったが、その代わりに未来を占う能力があったので、卜占を担うようになった。火の一族は血気盛んで勇ましかったので、島を守る武人となった。水の一族は海や川で漁をして、また森の獣や木の実などを採集して、島民の食料を賄うようになった。木の一族は木を組み合わせて道具を作り、島民の暮らしを楽にした。金の一族は小判を生産し、物々交換より便利な貨幣経済という仕組みを作り出した。「これが今も踏襲されている島のありかた。マヨの母の歴史の授業は本当にためになるわ。私これまでそんな歴史の話なんてちっとも知らなかったもの。なぜ占い師さんに目がないのか、職人さんたちは木の上に住んでいるのか。話を聞けばナルホドだよね」

 ボーンコレクターは首から下げた少女の小指の骨を優しく愛撫し、彼女の声をもっとよく聴こうと、じっと耳を澄ます。