ボーンコレクター 02-06

「見よや。これこそ、その腕に人をさらって、悪夢と心神喪失をもたらす偉大なるゾノクワぞ。偉大なる悪夢をもたらす御方。我らを失神せしめる偉大なる女神よ。恐るべきゾノクワよ」姫はバリバリと青銅の腕輪を食べるゾノクワを称え、ゾノクワは満足そうに頷く。「そうだ。我こそは悪夢と恐怖の女神、ゾノクワ。しかし腹が重くなって何だか眠くなってきた。これから姫を食べてしまわねばならぬのに、この睡魔はいったいなんとしたことか。ああ、眠い眠い。これでは踊ることもままならない。わたしの可愛いヒキガエルよ。いったいどうしたというのだ。お前は眠ってしまったのか」ゾノクワはそんなことをブツブツとつぶやきながら姫を放してあたりをさまよい、そのまま木の根にもたれかかるようにして眠ってしまった。「さあ、今だわ」と姫はそっとゾノクワに近づいて、彼女が大事そうに抱いている赤ん坊の腕をつねった。赤ん坊は天地も割れんばかりの大声でギャアと泣きだし、ゾノクワは驚いて目を覚ました。「姫よ、お前が私の赤ん坊を泣かせたのか?」見えない目をランランと光らせてゾノクワは怒鳴った。「そうよ、ゾノクワさん。約束通り宝物をくださいな」姫はゾノクワの迫力に負けまいと、強がって言った。「ううむ。約束は約束だ。丸木舟と不老不死の水と死の光線をお前の一族に与えよう」ゾノクワはそう言って、木につるしていた丸木舟を下ろし、水の瓶と奇妙な機械を姫の前に置いた。以降、水の一族の宝物殿にはこの三つの宝物が納められている。ちなみに丸木舟にあいている穴はゾノクワがかじった跡である。