ボーンコレクター 02-05

 ゾノクワには目がない。彼女はいつも赤ん坊を抱いていて胃袋にはヒキガエルを飼っている。胃袋のヒキガエルはいつも空腹だったので、ゾノクワは村に出かけては赤ん坊をさらって食べた。赤ん坊は食べられるとき泣きわめくのでゾノクワは笑って言った。「人間の赤ん坊はすぐに泣く。それに比べて私の赤ん坊の優秀なこと。いつもすやすや眠っていて泣いたことなど一度もない。もし私の子供を泣かすことのできる者がいたら、私の大事な丸木舟と不老不死の水と、死の光線をやろう」その言葉を、少し離れた岩陰で水の一族の姫が聞いた。よし、私があの赤ん坊をつねって泣かせてやろう。姫はそう決めて、わざと大声で歌いながらゾノクワの前に出た。「なんだお前は」とゾノクワは見えない目を吊り上げて姫を睨み付けた。「ゾノクワさん、ゾノクワさん。私、あなたを私みたいに綺麗にする魔法を知っているのよ」姫はゾノクワの手の届かないところで言った。「ワシはどうせ目が見えん。綺麗であろうが醜かろうが、知ったこっちゃないわい」ゾノクワは吼えるようにそういうと、一瞬で姫のそばにより、その細い腕を掴んだ。「あら、ゾノクワさん。痛いわ、痛いわ。乱暴はやめて。綺麗になるのがお嫌なら何がお望みなの?」ゾノクワはフフンと鼻を鳴らして言った。「ワシの可愛いヒキガエルが腹を減らしておる。お前のこの手を食わせてもらおう」そう言ったかと思うと大きな口を開けてガブリと噛みついた。姫は慌てて青銅の腕輪を外し、大きなゾノクワの口に放り込んだ。ゾノクワはそれを姫の腕だと思い、満足そうにバリバリとかみ砕いた。