1970-1980 ニューヨーク 02

 七十年代前半はフュージョン全盛の時代だね。ハービー・ハンコックとジョー・ザビヌルが結成したウェザーリポートは音響機器や電気楽器の発展とも結びつき、時代の最先端を走ってね、その後の音楽の方向性を決定づけるほどの影響力を示したよ。シンセサイザーの飛躍的発展とウェザーリポートの歴史は、まさにリンクしていたのさ。『ビッチェズ・ブリュー』でギターを弾いたジョン・マクラフリンとピアノを弾いたチック・コリアも、もちろんフュージョンの展開に貢献したよ。ハンコック、マクラフリン、チック・コリアらの成功が従来のジャズファンだけでなく他の音楽ファンたちからも支持されるムーブメントを作り上げたんだ。それで一九七三年、ハンコンクが結成したヘッドハンターズはとうとうジャズとロックの垣根を取り払ったけれど、これは画期的なことだったよね。ヘッドハンターズの音楽はブラックファンクと呼ばれるようになって、ディスコミュージックのひとつとして記録的な売り上げをあげてね。ハンコックはブラックミュージックの英雄となったんだ。マイルスの思い描いたジャズとロックの融合はハンコックやチック・コリアなど、彼の弟子たちによって見事に花開くことになって、他の分野の音楽にも多大な影響を及ぼすムーブメントになったんだ。だけど反面、このフュージョンの人気はそれまでの伝統的なジャズをシーンの片隅に追いやる結果ともなったよ。ブームに乗っかって従来のジャズミュージシャンも若手ミュージシャンも当然のようにフュージョンに流れたんで、フォービートの演奏者は激減さ。ジャズにとって痛し痒しだったね。