1970-1980 ニューヨーク 01
六〇年代後半、フリージャズに押されながらもマイルス・デイヴィスはまた新たな挑戦を試みていて、それはロックとジャズの融合ってやつだったんだ。エレクトリックギターにエレクトリックピアノ、十六ビートに八ビート。軽音楽の主流となった、そんなロック的な要素をマイルスは大胆に取り入れたね。これには多くのジャズミュージシャンが衝撃を受けたよ。そして一九七〇年、『ビッチェズ・ブリュー』ってアルバムをマイルスが発表すると一気にフュージョンの時代が始まったんだ。帝王マイルスが帝王たる所以は、才能ある多くの若手ミュージシャンを自分のコンボに参加させ、世に送り出したからだけれど、このフュージョンでもハービー・ハンコックなんて、天才ピアニストを世に出したんだからホントすごいよ。ちなみにジョン・コルトレーン、ポール・チェンバース、レッド・ガーランド、フィリー・ジョー・ジョーンズ、キャノンボール・アダレイ、ビル・エバンス、ジミー・コブ、ウィントン・ケリー、ソニー・スティット、ハンク・モブレー、ジョージ・コールマン、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス、ウェイン・ショーター、チック・コリア、ジョン・マクラフリン、キース・ジャレットなんかも、みんなマイルスのコンボから巣立って行ったミュージシャンだね。蒼々たる顔ぶれだよ。またジャズとロックとの融合と言えば、ジミ・ヘンドリックスとマイルスはかなり仲が良かってさ、『ビッチェズ・ブリュー』の出たあとに一緒にアルバムを作ろうって話も進んでいたけど、突然ジミが死んじまって流れちまって。ま、残念だったね。