1960-1970 ニューヨーク 03

 まあともかく、モードはマイルスが自らの最高のコンボと称したメンバーたちによってジャズ界に徐々に浸透していったよ。ハービー・ハンコック、ウエィン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス。また、それ以前にマイルスコンボで活躍したビル・エバンスやジョン・コルトレーンなどもモードの発展に貢献したね。ハードバップの方はというとクール路線のマイルスの逆張りで、よりホットな黒人音楽と結び付きファンキージャズに進化したね。またエリントン楽団のジャングルムードが進化してラテンジャズが生まれたり、ボサノヴァと結びついたブラジリアンジャズなんかも出てきたよ。ジャズのスタイルは百花繚乱、もう一言でジャズと言っても収まり切れないほど多様になったんだ。大きな流れが細分化されて、ここからは個々に発展していくように見えたね。だけどそんな中、一つ大きな潮流となりかけたムーブメントがあったよ。それがフリージャズってやつさ。ジャズからリズムを外して、より自由度を高めるというオーネット・コールマンやセシル・テイラーのスタイルは全く斬新で人々を驚かせたね。そのうちなんとモードの大立役者の一人ジョン・コルトレーンまでがフリージャズに転向しちまったんだから、これにはファンも驚いたね。フォービートを捨てたアナーキーな演奏はコルトレーンとコールマンに引っ張られて、細部化したジャズの中、最も大きな流れになるかのように見えたんだ。ところが一九六七年、コルトレーンが薬物中毒で死んじまってね。これでフリージャズも空中分解。大きな流れにはならず細分化しちまったのさ。