1950-1960 ニューヨーク/ロサンゼルス 05

 五〇年代はジャズの黄金期だったね。五十二丁目を中心とするジャズクラブは活気にあふれ、ブルーノート、プレスティッジ、リバーサイド、サヴォイ等々、ジャズ専門レーベルは業績を上げ続けたんだ。ニューオリンズからシカゴ、カンザスシティのビッグバンド、ニューヨークのジャングルムードにスイング、ビバップ、ハードバップと幾多の段階をのり越えたジャズだからね。音楽的にも洗練されてミュージシャンの腕も格段に向上していた。個性的で才能豊かなジャズプレイヤーが次々に世に送り出されたんだよね。

 ところが五〇年代後半から雲行きが怪しくなってきたよ。理由はいくつかあるだろうけれど、最も重要な要因の一つとしてロックンロールって音楽の台頭があげられるよね。ジャズはもともとダンスミュージックを得意としていたけれど、マイルスが新主流派と銘打ってクール路線に舵を切ったことを幸いに、空席となったホットなダンスミュージックの座をロカビリーやロックンロールが埋めてきたんだ。黒人のように歌える白人エルビス・プレスリーが腰を振り振り『監獄ロック』を歌いだし、ダックウォークでギターを弾きながらチャック・ベリーが『ジョニーBグッド』を歌った頃から、ロックンロールは一気にメジャー音楽の中心になっていったんだ。ロックンロールのブームなんて一過性のものだって多くの人が笑ったけれど違ったね。六〇年代になるとこのロックンロールの流れをくんだザ・ビートルズやローリングストーンズが現れて、爆発的な人気を博し。ジャズは徐々に音楽の中心から外されていくことになるんだ。