1950-1960 ニューヨーク/ロサンゼルス 04
五〇年代ってのは戦争が終わった復興景気の中、ジャズが最も華やかに光り輝いていた時代だね。ビバップが衰えてハードバップが誕生して、そんな栄枯盛衰があったりして、とにかく面白かったよね。ビバップ最後のコンサートと言われるものが行われたのは一九五三年、カナダのトロントだったよ。メンバーは当然バードにディズ。その他のメンバーも蒼々たるものでピアノはバド・パウエル、ベースはチャールス・ミンガス、ドラムはマックス・ローチだったよ。だけどこれ以降、ビバップの英雄たちは麻薬とアルコールに蝕まれて次々に消えちまうんだ。バードはそれこそ薬物中毒で死にバド・パウエルは精神病院に送られて。もう散々さ。そんな中、ハードバップが本格的に産声を上げたんだ。
ハードバップの誕生は一九五四年、『バードランドの夜』が録音された時からだね。メンバーはドラムのアート・ブレイキーを中心にピアノのホレス・シルバー、トランペットのクリフォード・ブラウン、サックスのルー・ドナルドソン、ベースはカーリー・ラッセルだったよ。この録音はレコード会社ブルーノートの企画でね。ブルーノートが契約していた各楽団のリーダーたちを名門ジャズクラブのバードランドで競演させて、それを録音したってわけさ。アート・ブレイキーとホレス・シルバーはマイルスと一緒に考えた新しい奏法をそこで披露してね。ビックリしたクリフォード・ブラウンとルー・ドナルドソンは負けじと素敵な演奏を見せたんだよ。会場は熱狂したね。これこそビバップがハードバップに変貌した歴史的事件の記録なんだってさ。